2011年6月21日火曜日

リノベーション(マンション)

第3 争点に対する判断
1 争点(1)(化学物質過敏症罹患の有無)について
(1)上記争いのない事実等に加え,下記各項目に掲記する証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 化学物質過敏症について(甲19,25,75,乙1,7)
(ア)化学物質過敏症については,様々な概念が提唱されているものの,厚生労働省が平成16年2月27日に室内空気質健康影響研究会における調査研究に基づき公表したところによれば,化学物質過敏症とは,微量化学物質に反応し,非アレルギー性の過敏状態の発現により,精神・身体症状を示すとされるものをいう。
(イ)日本において化学物質過敏症と呼ばれる病態は,国際的にはMCS(Multiple Chemical Sensitivity,多種類化学物質過敏症)との名称で呼ばれ,その存在をめぐり,学会において様々な見解が示されているところ,平成11年には,米国の研究者34名の署名入り合意文書として「コンセンサス1999」と題する見解が公表され,MCSは,〔1〕再現性を持って現れる症状を有する,〔2〕慢性疾患である,〔3〕微量な物質への暴露に反応を示す,〔4〕原因物質の除去で改善又は治癒する,〔5〕関連性のない多種類の化学物質に反応を示す,〔6〕症状が多くの器官・臓器にわたっている,と定義された。
(ウ)化学物質過敏症として報告されている症候は多彩であり,粘膜刺激症状(結膜炎,鼻炎,咽頭炎),皮膚炎,気管支炎,喘息,循環器症状(動悸,不整脈),消化器症状(胃腸症状),自律神経障害(異常発汗),精神症状(不眠,不安,うつ状態,記憶困難,集中困難,価値観や認識の変化),中枢神経障害(痙攣),頭痛,発熱,疲労感等が同時にもしくは交互に出現するとされている。
(エ)化学物質過敏症については,その病態や発症機序について,未解明な部分が多く,「化学物質過敏症」と診断された症例の中には,中毒やアレルギーといった既存の疾病概念で把握可能な患者が含まれていることがある。また,化学物質の関与が明確ではないにも関わらず,臨床症状と検査所見の組み合わせのみから「化学物質過敏症」と診断される傾向がある。
(オ)もっとも,北里研究所病院臨床環境医学センターのG医師の調査結果によると,化学物質過敏症の発症原因の半分以上が室内空気汚染(シックハウス)であり,続いて農薬・殺虫剤,有機溶剤が発症原因として挙げられている。
(カ)シックハウス症候群とは,厚生労働省が平成16年2月27日に室内空気質健康影響研究会における調査研究に基づき公表したところによると,医学的に確立した単一の疾病ではなく,居住者の健康を維持するという観点から問題のある住宅においてみられる健康障害の総称をいう。
(キ)シックハウス症候群の症状として訴えの多いものは,皮膚や眼,咽頭,気道などの皮膚・粘膜刺激症状,全身倦怠感,めまい,頭痛・頭重などの不定愁訴である。
(ク)シックハウス症候群の発症原因については,全てが解明されるに至っていないものの,主な発症関連因子として,建材や内装材などから放散されるホルムアルデヒドやトルエンをはじめとする揮発性有機化合物が指摘されている。なお,このような指摘を受けて,国土交通省は,建築基準法関連法令の改正により,ホルムアルデヒドを建材に使用することを規制するとともに,防蟻剤として使用されてきたクロルピリホスの使用も禁止し,厚生労働省は,平成14年2月8日,シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会において,ホルムアルデヒド,トルエン,キシレン,パラジクロロベンゼン,エチルベンゼン,スチレン,クロルピリホス,フタル酸ジ-n-ブチル,テトラデカン,フタル酸ジ-2-エチルヘキシル,ダイアジノン,アセトアルデヒド及びフェノブカルブの計13種類の化学物質について室内濃度指針値を策定した。ただし,同指針値は,必ずしもシックハウス症候群を直ちに引き起こす閾値ではない。
(ケ)もっとも,上記(キ)の症状のうち皮膚・粘膜刺激症状は,アレルギー疾患や感染症などによっても生じ,温度,湿度及び気流等の温熱環境因子が増悪因子となり得るし,全身倦怠,めまい,頭痛・頭重などの不定愁訴についても,各種疾患により生じるほか,温熱環境因子,生物因子(感染症),照度,騒音及び振動等の様々な物理的環境因子,精神的ストレスなどが発症・増悪に関連する。
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