(コ)原告Bは,上記問診・質問票に対する回答では,現在の主な症状として,様々な臭いが気になること,めまい,両足の冷感やこわばり,外出先の建物内を息苦しく感じること,不眠を挙げ,このような症状が平成17年5月から始まったこと,考えられる原因として,防虫,防腐剤,クレオソート油Rの使用を挙げた。また,原告Bは,環境暴露及び過敏性の質問票において,現在,「頭痛,頭の圧迫感,いっぱいに詰まった感じなどの頭部症状」,「発疹,じんましん,アトピー,皮膚の乾燥感」,「外陰部のかゆみ又は痛み,トイレが近い,尿失禁,排尿困難などの泌尿・生殖器症状」については症状がないものの,「筋肉,関節の痛み,けいれん,こわばり,力がぬける」,「眼の刺激,やける感じ,しみる感じ,息切れ,咳のような呼吸症状,たん,鼻汁がのどの奥の方に流れる感じ,風邪にかかりやすい」,「動悸,脈のけったい,胸の不安感などの心臓や胸の症状」,「お腹の痛み,胃けいれん,膨満感,吐き気,下痢,便秘のような消化器症状」,「集中力,記憶力,決断力低下,無気力などを含めた思考力低下」の各項目について10段階のうち5程度の症状があること,また,「緊張しすぎ,上がりやすい,刺激されやすい,うつ,泣きたくなったり激情的になったりする,以前興味があったものに興味が持てないなどの気分の変調」,「めまい,立ちくらみなど平衡感覚の不調,手足の協調運動の不調,手足のしびれ,手足のチクチク感,眼のピントが合わない」の各項目について10段階のうち7程度の症状があること,しかも,これらの症状は,平成17年5月まで全くみられなかったことを申告したほか,車の排気ガス,タバコの煙り,殺虫剤,除草剤,ガソリン臭,ペンキ,シンナー,消毒剤,漂白剤,バスクリーナー,床クリーナー,特定の香水や芳香剤,清涼剤,コールタールやアスファルト臭,マニキュア,除光液,ヘアスプレー,オーデコロン,新しい絨毯やカーテン,シャワーカーテン及び新車の臭い,水道のカルキ臭その他の臭いによって,中程度から重度の上記各症状が出ることを申告した。そして,原告Bは,日常生活において,食事は摂れ,家事もひととおりできているものの,化粧品や防臭剤が全く使えないほか,旅行や車のドライブ,レストランなどへの外出など一般の社会的活動への参加が困難となっており,日常生活に様々な障害が生じていることについても回答した。
(サ)また,上記(ケ)の各検査のうち血液検査と尿検査では,赤血球MCVの大型化と尿に潜血が認められたが,その他の項目については全て基準域内との結果が出ており,特に異常は検出されなかった。他方,その他の検査では,眼球追従運動障害,平衡機能障害が認められ,神経機能検査結果にも異常がみられた。
(シ)原告Bを診察したH医師は,上記問診結果及び各検査結果を踏まえ,原告Bの病名を「シックハウス症候群」としたうえ,「発症後徐々に症状は改善してきているが,なお眼球追従運動,平衡機能には障害が検出されている。また,シックハウス症候群から化学物質過敏症に移行してきており,微量な空気汚染物質に鋭敏に反応して症状が出現する状態が続いている。」と診断した。
(ス)その後,原告Bは,平成18年6月2日,北里研究所病院を再度受診したところ,H医師は,「化学物質過敏症」と診断し,「中枢神経機能検査でなお症状の改善は認められず,極めて微量な化学物質に鋭敏に反応して症状の悪化を示す傾向が続いている。」との所見を示し,また,平成21年2月4日の再診の際には,同じく病名を「化学物質過敏症」としたうえ,「神経系の機能検査で異常が出現しており,米国及び本邦の診断の基準と照らし合せて上記診断をする。問診より,シックハウス症候群より移行してきたものと思われ,日常生活にも非常に難渋している。」と診断し,症状及び検査所見について「平成17年5月の増築から発症。めまい,両足の冷え,こわばり,息苦しさ,不眠などの多彩な症状とともに,微量な種々の空気汚染化学物質に鋭敏に反応して,症状の悪化をきたすようになる。当科受診時の検査では,眼球追従運動障害,平衡機能障害が検出されている。なお,一般的な血液検査や尿検査では特に異常は検出されていない。」とした。
(セ)そして,H医師による原告Bの上記症状及び検査所見に関する意見は,概ね次のとおりである。
「原告Bの多彩な症状は決して精神的なものではなく,神経を中心とした機能障害が起こっている身体的な病気である。問診から,増築工事から発症しており,その際のクレオソートからの揮発性物質が関与している可能性がある。これまでにも,クレオソートの屋内使用で化学物質過敏症を発症した患者の診察経験がある。クレオソートは発がん性物質の除去はされているがその他の揮発性物質についてはそのままと思われる。原告Bの症状は,1999年に米国で提唱された化学物質過敏症診断の合意事項,いわゆる「コンセンサス1999」の6項目の診断基準にも合致している。」
(ソ)原告Bの現在の症状は,臭いと電磁波に敏感であり,マスクをしてシールド材の帽子をかぶらないと外出できない状態であること,常に揺れる地面を歩いているような感覚があること,度々めまいと吐き気に襲われ,後頭部に強い圧迫を感じて破裂しそうな感覚に襲われること,集中力がなく,不眠が続き,うつ状態になることが頻繁にあること,内出血になりやすいことが挙げられる。また,原告Bは,上記の症状から日常生活にも支障をきたしており,ショッピングセンターやデパートへ買い物に行っても,衣類や商品,壁などから放散される化学物質によって呼吸困難に陥るため,長時間建物内にいることができず,歩行中もペンキの臭いがあると具合が悪くなるほか,自宅の中でも,電磁波の出る電化製品(パソコン,テレビ,電子レンジ,電磁調理器,ホットカーペット,携帯電話)を使用することができず,電源を切ることができない冷蔵庫については,主要な生活空間であるリビングから最も離れた玄関に設置している状態である(なお,電磁波は化学物質の毒性を増加する作用があるといわれている。)。マンションのリノベーション工事の見積りの比較のサイトも紹介します。