イ 原告Bの症状について(甲10,14ないし17,36,76,77,79,82,85,乙16,17,20,原告A,原告B)
(ア)被告は,平成17年4月28日,本件工事を開始し,同年5月6日,下請大工がクレオソート油Rを増築部分の土台に塗布したところ,原告Bは,本件工事現場付近から強烈な異臭を感じるようになった。
(イ)原告Bは,翌7日,異臭が消えないため,庭を確認したところ,母屋のリビング下の通風孔に,クレオソート油Rの入った缶が蓋の開いた状態で置かれているのを発見したため,缶の蓋を閉め,はけを上に置いたうえ,スーパーのビニール袋に入れて縛り,母屋から離れた場所に移動させた。原告Bは,このころから,鼻水が止まらなくなり,肌にピリピリとした痛みを感じるようになった。
(ウ)また,同月11日,下請大工の子方が再度クレオソート油Rを塗布した際,原告Bは,強い異臭を感じた。
(エ)以後,クレオソート油Rの使用は中止され,別の防蟻剤を取寄せることになったが,本件工事は予定通り続けられた。
(オ)原告Bは,同月6日以降,鼻水,頭痛,吐き気,めまい,喉の腫れ及び下痢を発症した。
(カ)原告らは,同月29日,原告A宅を出て上尾市内の旅館に移り住んだが、その後,原告Bは,同年6月6日,松沢医院を初めて受診し,37.2℃の微熱と喉の痛み,咳,下痢の症状を訴え,旅館の部屋にパラゾールがあって皮膚がピリピリすることを伝えた。そして,原告Bは,同月13日と同月18日に同医院を再受診したところ,いずれも微熱と喉の痛みの症状がみられ,「アレルギー性気管支炎及び咽喉頭炎」と診断された。なお,その原因について,松沢医院の医師は,原告Bからの申告を受け,「クレオソート用ガス吸入による疑い」と診断した。
(キ)原告Bは,同月29日,松沢医院を再度受診した際,喉の痛みが続いていることを訴えたほか,下半身のだるさを訴えるようになった。原告Bは,同年8月22日,松沢医院の医師から,北里研究所病院臨床環境医学センターのH医師の紹介を受けた。
(ク)北里研究所病院は,シックハウス症候群及び化学物質過敏症の研究に先進的に取り組む日本有数の医療機関であり,同センター内は,化学物質が極端に少なくなるようコンピューターでコントロールされており,壁,床,椅子,衣服なども化学物質の発生が極力少ないものが使用されている。
また,H医師は,昭和35年3月に名古屋市立大学医学部を卒業し,同大学医学部の助手及び講師を勤めた後,北里大学医学部に移り,昭和63年4月からは同大学医学部眼科学の教授として,眼(網膜)の中毒学を中心に研究していたが,急性中毒から,微量な物質により引き起こされる慢性毒性,さらに微量な化学物質により起きる免疫毒性の研究を経て,化学物質過敏症の研究を開始し,平成4年4月には,日本臨床環境医学会を設立し,同学会事務局長を務めた。また,化学物質過敏症に関する著書も多数あり,H医師は,国内では化学物質過敏症の分野における第一人者である。
(ケ)原告Bは,平成17年8月26日,北里研究所病院を初めて受診した。この時,原告Bは,問診・質問票への記入をした後,採血,採尿,心電図,視力,眼圧の検査に加え,眼球運動検査(目だけでスムーズに物を追うことができるか調べる検査),MTF(白と黒の縞のコントラスト感度を調べる検査),瞳孔検査(光を目に入れたときの瞳の動きを調べる検査)を受け,H医師の診察を受けた。なお,眼科的検査が行われているのは,化学物質過敏症患者の中には,自律神経機能の障害により,目に異常を伴う場合が知られているためである。
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