イ クレオソート油Rの使用状況及び本件工事の経緯について(甲36,38,乙20,証人E,原告A)
(ア)被告は,平成17年5月6日,増築部分の基礎部に土台を設置する際,土台の基礎部接面部分にクレオソート油Rを塗布したうえ,木工事を開始した。
(イ)その後も木工事が続けられ,同月9日には,増築部分の外枠が木材によって組まれつつある状態となり,翌10日には,増築部分の屋根工事が行われ,窓枠にはサッシが取り付けられた。
(ウ)被告は,翌11日,増築部分の土台にクレオソート油Rを再度塗布した。なお,被告は,同日,原告Bから増築部分の屋根形状が違うとの指摘を受け,前日に施工された屋根を解体した。
(エ)その後,クレオソート油Rの使用は中止され,別の防蟻剤を用意することになったが,クレオソート油Rが2回にわたって塗布された土台部分について,被告がクレオソート油Rを除去するための措置をとるようなことはなかった。
(オ)本件工事は,同月12日以降も予定通り進められ,同日には木工事屋根の作りかえ,同月13日には破風板直し及び大引き敷き込み工事,同月14日には増築部分床根太組及び下地ビルダーパネル貼りが行われた。
(カ)そして,同月16日には,母屋との接続工事が開始され,母屋の接続部分の解体と養生が行われ,翌17日には,母屋と増築部分をつなぐ渡り廊下の造作工事が開始された。
(キ)その後,被告は,同月23日ころから,渡り廊下の造作工事を終えて再び増築部分の床フロア貼りサッシ枠取付け工事を行っていたが,同月27日の夜,原告Aから,原告Cと原告Dの体調が悪いこと,その原因がクレオソート油Rを使用したことにあるのではないかとの連絡を受け,話合いの結果,翌28日をもって本件工事は中止されるに至った。
(ク)原告らは,同月29日,クレオソート油Rによる空気汚染から避難するため,上尾市内の旅館に移り住み,それから約1年間は,旅館や借家を転々としながら生活した。
(2)上記認定事実のほか,上記1(1)の化学物質過敏症の発症原因物質に関する認定事実並びに原告B及び原告Cの症状に関する認定事実に基づき,被告によるクレオソート油Rの使用と原告B及び原告Cの化学物質過敏症の罹患との間に因果関係が存在するか否かについて,以下,検討する。
ア 原告Bについて
(ア)上記1(1)アに認定の事実によれば,化学物質過敏症の発症機序については未解明な部分が多いものの,その発症原因の多くは室内空気汚染(シックハウス)とされていること,その原因物質として建材や内装材などから放散されるホルムアルデヒドやトルエンをはじめとする揮発性有機化合物が指摘され,厚生労働省も13種類の化学物質について室内濃度指針値を策定したことが認められるところ,上記1(1)アの認定事実によれば,クレオソート油Rには,13種類の化学物質は含まれていないものの,ビフェニル,ナフタレンといった揮発性有機化合物が含まれていることが認められるほか,このような揮発性有機化合物の含有量については従来型クレオソートも変わらないことが窺われ,従来型クレオソートによって化学物質過敏症を発症した例が過去にあること(甲44,85)が認められる。そして,上記1(1)イで原告Bの症状について認定したとおり,被告は,平成17年5月6日にクレオソート油Rを増築部分の土台に塗布したところ,原告Bは,クレオソート油Rの強烈な刺激臭に耐えられず,翌7日にクレオソート油Rが入った缶の蓋を閉めて,これをビニール袋に入れて縛ったのであり,その際,クレオソート油Rの臭いを近接して吸引したことが認められるほか,原告Bは,同日以降,それまで全く症状のなかった鼻水が止まらなくなり,他にも肌のピリピリ感や頭痛,吐き気,めまい,喉の腫れ及び下痢を発症したこと,原告Bには,それまで何らアレルギー性疾患や感染症への罹患はなかったこと,上記各種症状を発症した時期において,何か他の原因物質と思われるものに暴露した事実がないことに照らすと,被告がクレオソート油Rを使用したことにより,原告Bが化学物質過敏症に罹患した蓋然性が高いといわざるを得ない。マンションのリフォーム工事の見積り比較のサイトも紹介します。